黒酢というものが、我われ日本人の歴史上に登場したのは、いったい、いつ頃のことなのでしょうか。歴史学者の考察によりますと、これはたいへんに古いようです。最初に嗜好品として登場したのは酒ですが、その酒は現在の日本酒とは違って、蒸したモチ米を口で噛んでつくった「口かみ酒」だったといわれます。この口かみ酒以後、帰化人によって新しい酒づくりの方法がもたらされ、辛口でアルコール度の強い酒がつくりだされるようになったのですが、それと時を同じくして酢がつくられるようになった、といわれています。
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それが、だいたい応神天皇の頃(四世紀)だろうと、いわれています。文献には、有名な「大宝律令」の中に酢をつくる職があったことが記されています。つまり、聖徳太子の時代には、酢をつくることは官職であったわけです。このことをみても、酢がいかに大切なものであったかがよくわかります。当時すでに酢は、薬用をかねたとても貴重な自然食品だったわけです。きわめて興味ある事実としては、聖徳太子が橘をデザインした家紋を使用していた、ということです。橘は、果実の中でもっとも多くクエン酸を含有しています。太子は、健康と幸福のシンボル、不老長寿の秘実として、橘の実を珍重し、家紋としたのではないでしょうか。